4 社内同好会に新部員を迎えるあいさつ

 

〜卓球部長のあいさつ〜

 諸君、入社おめでとう。そしてわが伝統ある山田製作所卓球部の一員に加わられて、さ

らにおめでとうと申し上げます。

 当卓球部は、県の職業人卓球リーグ戦でもAクラスの位置にあります。残念ながらまだ

一度も優勝したことはないのですが、今年こそは実力ある諸君らを新入部員に迎えて、ぜ

ひ優勝杯をかちとりたいと思っております。

 しかし、われわれは卓球をするためにこの社に入社したのではなく、仕事をするため、

職業人として生きるために入社し、余暇を卓球で心身ともにきたえる。これが当社の卓球

部のあり方であり、部の方針でもあります。大会で出勤ができないことはあっても、仕事

の責任だけは果たしていただきたい。

 大会で優勝をめざしてがんばる、そのねばりの精神と、スポーツマンシップを忘れずに

当卓球部の一員として、今後の活躍を大いに期待しています。いっしょにがんばりましょ

う。

〜華道同好会会長のあいさつ〜                  

 生け花は、茶の湯とともにもっとも日本的な芸術です。昔の女性は、野に咲いている花

を髪に飾り、衣服につけて花の美しさを愛したといわれております。このように美しいも

のをそのまま身近かにおきたいという、美に対する素朴な衝動から、花のもつ美しさをも

っと強調することを考え、さらに自分の美的感覚の申で体系づけ、位置づけて美を創造再

現しようと考えるようになり、そこからさらに、自然の美への観察と工夫と技術が生ま

れ、現在のような各流派の華道が発達してきたといわれております。

 私ども華道部の未生流は、山村山磧を流祖として江戸時代に完成した正花ですから、現

代まで200年の伝統があります。未生流の特色は、花のもつ清らかさみやびな点を強調

し、その中に活ける人の創意をいかし、清雅と自由性にあふれ、花の気品を活けるところ

にあります。

 すべての芸術は、それを作る人の人間性があらわれるといわれております。華道にして

も同じことで、いくら流派のお花が気品高いからといって、活ける人の心に気品がなくて

はなにもなりません。「心をこめてうかがえば花自ら教えあり」ということなのです。ど

うぞ技術だけでなく、花の心も人の心もよみとれる、美しい女性になられますよう、精進

なさってください。

     〜俳句同好会会長のあいさつ〜             

 今年も、この俳句同好会に若い方が多数、ご参加くださってうれしく思います。

 ご存知のように、俳句は、五・七・五の十七文字を連ねて、自然の豊かさや美しさをそ

の中によみ、人の心の機微をうたい上げることのできる、日本独自の繊細な文学と申せま

す。そもそも日本の民族は、生まれながらにして、自然の懐に抱かれ、自然と親しまね

ばならなかった農業民族でありましたので、日本人にとっては、自然は呪うべきものでな

く、限りなくなつかしいものであったわけです。

 人々は昔から草木を愛し、自然をたのしみ、そして楽天酒脱に生きていたわけです。俳

句では、まず、人々の楽天酒脱の面が"笑"の文学として芽を出して、

次に"寂"のばあいの方の種子が立派な実を結び、現代まで、永々とその命脈を保ってき

ているわけでございます。これは、説明をいたしますと、長くなりますので、今後また、

折にふれて皆さまと研究、話し合いをしていきたいと思っております。

 それから、よく入会をすすめると若い方に、「俳句なんて老人趣味だね」とか、「作り

たいとは思うが、難しそうですから」といわれます。俳句は、決して難しいものではあり

ません。難しいと敬遠する前に、作ってみようとすることです。まずは、心に思ったこと

を、そのまま五・七・五の文字にあらわすようにまとめてみることです。ただ、そのと

              

き、句の中に必ず季題を忘れずに詠み入れることが約束になっています。これは、やって

いくうちにすぐわかります。

 俳句をやるようになりますと、季節の移りかわりが目について、通勤電車の中でも、

ちっとも退屈しなくなります。木の芽がぽつぽつと少し青く出てきたな、とみているうち

に、すぐ若緑の葉になっていく、自然の生命力の躍動するさまが手にとるようにわかりま

す。

 俳句を老人趣味ときめつける方は、俳句にはこういう精神的な若さを必要とするのだと

いうことが、少しも分かっていない方ではないでしょうか。お互いに精神こうちゃくの老

人にはなりたくないものです。


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