■殉職工場組合員を悼む

 

本日ここに、故○○君の慰霊祭をとり行なうにあたり、労働組合を代表しまして、つつしんでお別れのことばを申し上げます。

今、ここで君の在りし日の面影をしのぶことは、私どもにとり、痛恨のきわみであります。君は資性温和にして、しかも進取の気性に富み、会社では優秀な技術工として三回も表彰された模範工員でした。

困難な作業や危険な業務については、いつも卒先垂範して事に当たり、後輩の指導に意を用い、われらが衆望を集められていたのであります。思えば六年前、わが労働組合の結成に際し、君は文字どおり心血をそそがれ、その後は部会委員として組合機関に参画せられ、末端における第一線のよき指導者として、組合員の信望と期待を一身にになっておりました。そのひたむきな組合運動への情熱と、強い責任感と誠実さは、万人の認めるところでありました。それほど我々にとって何ものにもかけがえのない君が、己れをかえりみない犠牲的な行為により、他の多くの同僚の命と莫大な会社の損害との引きかえに、尊い犠牲となられたことは、われら残った従業員一同にとって、痛みても痛みても余りあり、胸のはりさける思いであります。

身をていして大事を小事にくいとめられた君のご霊前に対して、われら全社員は、ただ深くこうべをたれるのみであります。仕事を心から愛した君、われらの生活向上のために寝食を忘れた君、同僚や後輩に厚い思いやりの限りをつくされた君、われらは君を尊敬し、衷心より慕っておりました。かかる君なればこそ、とっさの機転によって、われらの生命とわが社を救うことができたのです。私どもは、君のようなりっぱな同僚をなくしてしまったことを心から悲しむものであります。

今はまるでふぬけのようによりどころを失っております。しかし、いつまでもただ悲しんでいることは許されません。君の霊に対して、真にむくいることにはならないからてす。君の死を賭して職務をまっとうされたご霊前で、こんなめめしい思いは、許されぬことだと信じます。われら一同、このたびの君が身をもって教えられた精神をうけつぎ、社業の発展と全社員の福祉に力をつくし、そしてますます成長していくことこそ、君のみたまを安んずる唯一の方法であり、君が心ならずも残されたご家族の方々をおなぐさめする道であると考えます。ご家族のことについては、社長の固い約束もあり、私ども全従業員も、組合の名において、君のご遺族をお守りすることをここにお誓い申し上げます。どうぞ、安らかにお眠りください。


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