若い媒酌人のあいさつ

 本日は、みな様には、お忙しいなかを、おくり合わせの上、ご出席いただきまして、このような盛儀を迎えることができました。本人、両家ともども厚く御礼申しあげます。

 ご年長、ご先輩の方々も多いなかに、若輩の私が媒酌人の大役をうけたまわり、まことに借越とは存じますが、これは私どもがお二人の間を右往左往して、キューピットの役をいたしたことから、ご本人、ご両家より、ぜひにとのおことばがあったからでございます。もとより役不足の私どもゆえ、不行届、不なれの点も多々あろうかと存じますが、お許しいただき、ごあいさつ申しあげさせていただきます。

 ただ今、神前において、結婚の儀をとどこおりなくとり行ないまして、お二人の指には変らぬ誓いの指輪がさん然と輝いております。これも一重にご来賓のみな様方のご厚情のたまものと厚く御礼申しあげます。

 新郎清水孝君は、父上の清水宗大様の次男で、新潟に生まれ、よき米とよき酒に育った快男児でございます。清水家は代々酒造を業とされる旧家でございまして、現在はお父上ならびにご長男の宗忠氏が家業を経営されております。お姉様の富子さんは昨年、同県の旧家新田家に嫁がれ、ご主人の新田義部氏がローマ勤務となられ、今日はお見えになっておりませんが、およろこびの手紙が参っておるそうでございます。

 ご一家でも「あの腕白者に、和子さんのようにりっぱなお嫁さんがきていただけるとは夢のようだ」と、大変およろこびでございます。

 孝君は、○○大学夜間部を卒業して、ただちに東京物産に入社され、貿易第一課に勤務されています。貿易関係にたずさわっている者は、大変な勉強を強いられ、席のあたたまるひまがありません。孝君は入社の第一日目に、その大きな笑い声でわれわれを圧倒した名物男ですが、豪放快活のサンプルというだけでなく、大変な勉強家で、その緻密な計画と決断力、実行力で、社の期待を双肩に負う有為の人材であります。

 雪国生まれにしては白くないと思われる方もあるかと存じますが、これはスキーのためで、中学ころから色がさめなくなったのだそうですが、どうでしょうか。彼は無類のカラオケ好きでありまして、そのうまさもかけ値なしの特技と申せます。

 新婦の菊地和子さんは、菊地武三郎ご夫妻の長女でございます。お父上は、菊地計器工業を経営になり、全国工業界の理事その他の公職にもご関係になっておられます。和子さんは、○○大学英文科をご卒業になり、東京貿易秘書課に勤務され、この度のご結婚で退社されました。和子さんは入社試験に見えられた時か一ら、目ざとい社員の間にうわさとなったお美しい近代的なお嬢さんでございます。スポーツはテニスをご家族で楽しまれ、またお母様のご指導でご趣味の方は広いのですが、特に油絵を得意とされ、種々の展覧会にもご入選とうけたまわります。このように情操豊かで、ご聡明な和子さんを迎えられた孝君も幸せなら、和子さんもご幸福であろうと思いますにつけ「琴慧相和す(きんしあいわす)」ということばがお二人にぴったりだと思います。犬馬の労をとらせていただいた私どもも、光栄この上ないこととよろこんでおります。

人生はよく山登りにたとえられますが、私どもはまだ五合目にもたどりつかないありさまで、お二人に対しても「しっかり登りましょう」としか申せません。ご列席の経験も豊かな皆様より、いろいろとはげましと、戒めのおことばをいただきたいと存じます。さらにはまた、ご友人、同僚の皆様からは、お二人への讃辞に加えて、内輪話もいただいて、楽しいご歓談の一時を得たいと存じます。

本日は、せっかくのご臨席をいただきながら不行届の点も多く、粗酒粕肴のおもてなしにて恐縮に存じますが、本日人生にスタートをします二人の者にご声援たまわりますよう、本人ならびに両家にかわりお願い申しあげます。本日はどうもありがとうございます。


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