R一人で百万の味方

 夫にとって妻は百万の味方でありますし、妻にとっても夫は百万の味方であります。妻が夫に賛成し協力し、夫が妻を支持したことで、完成した大事業は歴史上にいくつも証明されています。あの仏教、キリスト教とならんで、世界三大宗教の一つであるイスラム教も、最初は教祖マホメットの妻ハディジアがたった一人の信者だったのです。この妻一人の入信が百万の味方となってマホメットを力づけたことはいうまでもございませせん。世間のすべてが背を向けることがあっても、妻が信じ夫を支えてくれるとき、素晴しい力がわくものです。新郎、新婦もどうぞ百万の味方となって善戦してください。

 

Sイギリスの寓話

 イギリスの寓話にこんなのがあります。ある紳士が、顔はみにくいが、歌のすばらしくうまい女性と結婚しました。その夜ふと目をさました紳士は、傍らに寝ている花嫁のみにくい顔を見て驚いた、これが昼間見た自分の花嫁だろうかと疑い、思わず「Get up and sing(歌え)」と叫んだ。すると、花嫁はおもむろに眼を開いたかと思うと言われるままに歌い始めましたが、その素晴しい歌につれて、紳士はまたとない美しい女性に感じ、やっぱり自分の妻だ、と安心して再び夢路をたどった、というのです。美点を見つめて短所を忘れる、これが本当の夫婦でしょう。

 

21.スプーン・レースの教え

 私の高校時代のお話です。ある秋の運動会で、恒例のフィナーレを飾る先生一同のスプーン・レースが始まったときです。このレースは体操の先生にせき立てられて、日頃運動に縁のないこわい先生方がしりごみしながらの出場で、その失敗が、生徒にとってうっぷん晴しの見もの、といったとんだ余興でございましたが、このとき、茶道の女の先生が進んで出られたのに一同驚きました。見るとその日は普通のお太鼓結びの和服姿でしたから、タスキをかけ、ツマをきりりと上げた勇しい姿です。生徒たちは思わず声をのみましたが、その先生が、ともかく無事に球を落さないでグランドを走り終えたとき、万雷の拍手が会場をゆるがしました。このことがあってから、今まで茶道の先生を敬遠していた生徒たちも、急に親密の度を増し、茶道の講義を熱心に聞くようになったということです。この先生の、得意ではないが自ら進んで歩み寄ろうとする態度こそ、お嫁さんにも、お姑さんにも必要な家庭円満のカギと存じます。

22.亭主の好きな赤エボシ

 夫婦円満のコツなどと申しましても、別に口伝も秘伝もあるものではございません。いうなればお互いに相手を満足させてやることであります。「亭主の好きな赤エボシ」という古くからのコトワザがございます。エボシというものは昔は頭にかむる男子の大切なアクセサリーで、大てい黒にきまっているもので、赤いエボシをかむるなどはバカに匹敵するほどの変人のすることですが、それが自分の夫の好むものなら、それを満足させてやるように自分もその赤エボシを好きになろう、というわけです。この妻の夫に対する気持は、夫にも当然あってよいもので「女房の好きなサツマイモ」では別に奇異ではありませんが、サツマイモの嫌いな夫も女房がそれを好むなら多少のおつきあいはするもので、そうしておけば、晩酌のお酌は気持良くやってもらえるし、そこで飲めぬ女房も一、二杯はつき合う、というところに円満さが生じるのであります。

 

23.逆鱗(げきりん)にふれるな

 夫婦生活の知恵と申しますと、妙な方へ誤解されそうですが、これは感情生活をどうしてじょうずに行なうか、ということであります。夫婦ゲンカのほとんどは、このちょっとした感情のもつれにあります。それは何気なしに言った一言が原因で、二、三日も口もきかない低気圧にもなり得るのです。その一言には相手の弱点にふれるものが多いものです。アキレス腱とか逆鱗などといわれるものです。人はだれでも弱点のない人はいません。ただ今皆様方からほめたたえられました、新郎、新婦さんにしても、何らかの弱点はおありのはずです。その弱点が他人には何でもないことでも、当人にとっては生命にかかわるような重大事にも思えるのです。夫婦の間でそれが何であるかを、お互いに早く知り、それにふれないようにするのも、夫婦生活の知恵というものでしょう。

 

24.夕日の寓話

 二人のお百姓が畑に立って、西の空の五重塔のあたりへ沈もうとする夕日を眺めていました。その入日が塔の左側へ落ちるか、右側へ沈むかで二人は争いましたが、らちがあかないうちに落日となりました。翌日もまた二人は同じ畑でいっしょになり夕日の落ちる頃昨日と同じように、塔のどちらへ落ちるかを争いました。そして不思議なことに昨日塔の左へ落ちると主張した男は今日は右だとガンコに言い張るのです。けっきょくその日もらちがあきませんでしたが、二人とも昨日と今日で立っている場所が入れかわったことに、気がつかないのです。この寓話のように、同じものでも立場をかえれば異って見えるものです。


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