梅の香も高い今日のよき日に、このようなおめでたい席にお招きをいただきまして、お二人におよろこびのあいさつをさせていただきますことは、私の心から光栄に存ずるところでございます。

 お二人はただ今、真白な人生のスタートラインに立っておられます。若々しく、元気なお姿で、その眼は希望に輝いております。そのまわりには、こうしたたくさんの方々が、そのスタートを祝い、そのご健斗を祈って集まっておられます。

 お二人には、心の準備も十分にできて、人生の目標に向って、どのような苦難も乗り越えて、そのよろこびを分かち合おうと、堅く心に誓っておられることと存じます。この凛々しいお姿を拝見しましては、今さら申しあげる何事もないようでございます。ただ「しっかり、がんばってください」と声援を送るだけしかないようであります。

 私も妻とともにスタートしてからすでに三十年のコースを走りつづけてきました。走って来た道をふり返りますと、あの山、あの谷、あの坂と、その時々の苦労やよろこびが思い出されてまいります。そして、あのコースはこう走ればよかつた、ここはこう走ればよかったと後悔されることばかり多いのです。失敗にもいろいろありますが、その共通の原因は何かと中しますと、借しみなく与えられた愛に甘えた他力本願の愛情の持ち方にあり、借しみなく奪った利己的な愛情にあったように思います。自己本位の愛情では駄目なようです。夫が妻を、妻が夫を思いやりながら、惜しみなく与え、借しみなく奪う愛情であってこそ、はじめて歩調を合わせることができるのではないかと思います。

 お父上にしても、お母上にしても、できることならその坂の走り方、その河の渡り方を、手を取って教えたいと思っておられるでしょう。そのために、居ても立っても居られない時もあるでしょう。しかし、人生の道は、自分でつくって走るものではないでしょうか。教えることのできない、また自分の走り方を教えてもそのままでは役に立たたないのが人生のきびしい道なのではないでしょうか。

 このおめでたいご出発にあたりまして、お二人が、借しみなく与え、借しみなく奪いつつ、スタミナを配分されて、人生を完走されんことをお祈りいたして、私のごあいさつといたします。本日はおめでとうございます。


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