正志君、結婚おめでとう。

 実を申しますと、正志君が結婚すると聞いたときは「よせ、よせ一人でいるほうがのんきだし、第一研究がはかどるよ」といって、まっ先に反対したのも僕ですし、また、その後、知夏子さんにお会いするや、「うん、あの人ならいいよ、早く式を挙げろよ」と、結婚を急かせたのも僕です。

 そこでその理由を、少々皆さんにお話ししたいと思うのです。結婚を反対したのは、まだ僕が独身ていることも大きな原因ですが、このこととは別に、われわれのような学究生活をしている者にとっては、日常の煩事が非常にマイナスになるからです。

 現代では、男性の地位が下落したのか、男性がおとなしくなったのか、マイホーム亭主、マイホームパパがあたり前のことになってしまっています。しかし、われわれのような仕事をしている人間には、それを要求されてもできないのです。この辺は、本日の花嫁知夏子さんに、とくとお聞きいただきたいのですが、私たちのような研究をしている人間にとっては、家にいても人におくれまいと思って努力をし、外に出ても同じことです。それは、中には、研究もし、勉強もし、仕事も普通にやっているという人もいるにはいます。

 しかし、それはある程度実績のある人のことで、われわれのような若手には、まだまだのぞめないことであります。どうぞ知夏子さん、その辺を理解してあげてください。

 それから、結婚を早くせよと申しましたのは、一度会っただけで、知夏子さんが非常にしっかりなさっておられる方だということがわかったからでございます。その上に、自然に身につけておられる、利口さとでも申すのでしょうか、人をそらない、いつも微笑をたたえ、処世の術をお若いのに心得ておられて、それが少しもいやみでないのです。

 正志君は、どちらかというと無口で、非社交的な人間であるのに、知夏子さんは出すぎず、それでいて社交的なよい面を持っておられますので、僕の浅い人間観からしても、お二人は似合いのご夫婦になられるにちがいないと確信して、正志君に結婚をせかせたわけでございます。

 これでわれわれのエースもゴールインです。しかしあとには、皆さまご覧のように、優秀なる独身男性がずらりと控えておりますので、この方もどうぞよろしくお願い申しあげます。


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