の住む本荘市の隣町、Y町からH町へ抜ける峠道がある。地元の人しか知らない寂しいジャリ道で、もちろん街灯一つあるわけではなく、日中でさえ通る車も皆無に等しい道である。

今から約十年ほど前、この人知れず寂しい道が、突然私も知ることになるくらいの出来事があった。いわゆる幽霊目撃談である。しかも多数の人が。

当時私は血気盛んな、怖い物知らずの若者で、夜暇を持て余し気味なときには、友人たちとゴーストスポットなどと呼ばれる場所へ車で駆りだしていたものだった。しかしこのような行動の背景には、もちろん興味本位もあったが、何よりこの目でその存在を確認してみたい、曖昧な世界の肯・否定をキチンと自分でつけてみたいというのが、その原動力であった。今でもその気持ちは変わってはいないが。

そんな私はその峠の話を聞いたとき、まさにこれだ!と思った。何しろその目撃談が、情報としてとても新鮮だったからである。私が聞いたのは、直接その幽霊なるものを見た人から聞いた話、いわゆる又聞きだったが、それでも目撃した人が十数名、しかも全員同時だったと言うこともあり、これは本物かもしれないと内心小躍りして、すぐその日のうち友人三人と、その現場まで行くことにした。目撃談によれば、その幽霊は、夕方四時過ぎに決まって出てくると言うことだったので、私たちもその時間に合わせて出発し、到着したのもほぼその時間に等しかった。着いてみると確かにそこは、薄気味の悪い、またさみしい道であった・・・。

ここでちょっと時間をさかのぼり、私達が訪れた日から数日前、ここで目撃した人達の話をまとめると(聞いたところによると)その人たちは、隣町の某建設会社の人達で、その道を舗装か、なにかの整備に来ていたらしい。その際、道ばたにあった古い石碑が、どうしても作業の邪魔になるので、機械か人手かはわからないが、元の場所から移動したというのだった。そうしたら・・・・

 にやらその石碑の背後から、ガサガサ物音がし始めたという。動かした人はそこに何か動物でもいるのかと思い、手を休めた。そしてそこから出てきたものは・・・

白い服を着た人間だったという。しかもその白装束の人間には何と首がなかったのだ。これで驚いてはいけない。その出てきた人数が、おびただしい数だったというではないか。それらを見た作業員たちは、当然恐怖のあまり、待機してあった会社の送迎バスに飛び乗った。しかもそのバスには他の工事関係者も乗っていたが、その人たち全員が同じその幽霊らしきものを見たのである。これでは仕事になるわけもなく、その日は全員が恐怖におののいて帰社したという。翌日、再び現場を訪れた作業員の人達は、昨日見たものへの恐怖もあったが、それが理由で仕事を遅らせるわけにもいかず、朝から作業に取りかかった。しばらく何事もなく、時間が過ぎていった。昨日のことがまるで全員同じ夢でも見たのかと思えるくらい、落ち着いていたという。そして昨日石碑を動かした時刻と同じくらいになったとき、昨日のことは夢ではないぞと、まるで彼らが自身で証明するかのように、山からまたしても首のない彼らが、続々と出てきたのである・・この二度目の出現も、やはり工事関係者全員が目撃している。地の底から響くような声まで聞こえたそうだ。「首返せー・・・」と。
     そして工事は翌日から延期になった・・・

 そこで私たちの登場である。この出来事を聞いたのが、その工事延期に決まった日である。つまり私たちは、ほぼ間違いない確率で、幽霊を見るチャンスに恵まれた(?)のだ。

 夕方四時過ぎ、我々が現場に到着したとき、辺りには人っ子一人おらず、ただ夕暮れ時にセミが鳴いているだけであった。問題の石碑はどこだろうかと、車をゆっくり進めて辺りを探してみた。誰一人として車外へ出ようとするものはいなかった。何しろ、いつ出てきてもおかしくない状況だったし、このときばかりは私も、探求心よりは恐怖心の方が勝っていたと思う。そしてようやく、なにやら古ぼけた石碑らしきものを見つけることができた。車から見た感じでは、ただの苔むした石であったし、どうも最近動かしたような気配は感じられない。もしかしたら違うのでは、と思い再び車をゆっくりと進めた。
の時、仲間の一人が、閉めきった車内が暑かったのか、それまで誰も開けなかった車の窓を開けてしまった。その途端、車内に何十匹ものアブが飛び込んできた。私達はまずその場から急いで離れ、アブを追い払うことで精一杯になってしまったのだ。したがってその日は、石碑も定かにならず、ましてほぼ間違いなく見られたはずの、首なし幽霊達も見ることはできなかった。しかし何とも言われない恐怖感だけは残ってしまった。翌日、その窓を開けた人が(良くある話ではあるが)原因不明の高熱で、会社を早退、そのまま緊急入院をした。

 しかしそんなことであきらめる私ではなかった。再び仲間を募り、今度は敢えて夕方ではなく、深夜に行ってみることにしたのである。しかも私はその時ビデオカメラまで持参したのである!

以下次号へ続く


ここに私が書いた内容は、すべて事実です。ここまで書いていて、気のせいか肩がひどくこってきました。この続きは、読みたい人が一人でも現れ次第すぐにアップしますので、掲示板かメール等でお知らせ下さい。しかしこれを読んだせいで、体調が悪くなっても、私としては一切責任負えませんので、あらかじめご了承下さい・・・・・・

つづき