日、10月19日秋田県湯沢文化会館まで、沢田研二(以降ジュリー) コンサートを、妻と二人で聴きに行った。

午後6時の開場を待つ間、会場前に集まった客層を私が観察した結果、「予想通り」のハイアベレージで、おそらくその平均は40代以降〜といった感じであった。

私達の席は、前から5列目のステージ向かって右側で、思ったより前列だったのでワクワクしながら彼の出を待っていた・・・。

 

私が東京在住の頃は、次々とやってくる外人大物バンドのコンサートを、食うものも食わず(貧乏学生には高すぎるチケット代!!)節約して見に行ったものだが、そのたびに予約できた席は、"S席"は"S席"でもステージの裏側の"S席"だったり(Bruce Springsteen'84代々木プール)、最後列のアリーナ席(David Bowie'90 東京ドーム)だったり、オペラグラスを使ってもよく見えないほど遠方(Sting'91東京ドーム)とか、前から3列目で大喜びしていたら2階席の3列目(Rolling Stones'98東京ドーム)で超落胆( ^.^)( -.-)( _ _)など、期待とは裏腹の席ばかりだった。だから今回も何か「オチ」があるのでは・・と席に着くまで心配だったのだ。

さて、開演の時間となり、ほぼ予定通りコンサートは始まった。一曲目は'99アレンジ風の「君をのせて」(今のアニメの歌ではない)であった。"風に向かいながら〜"と、年を感じさせない若々しい歌声で、ジュリーは登場した。ヽ(^。^)丿

私は彼のファン歴は相当長いという自負があるが、実物を見る機会は今まで一度もなく、すっかりいいオジサンになってしまってはいるが、我々の目前にいるのは紛れもなく、沢田研二その人であった!

第一印象。最近少しまた太りだしたジュリー。シャツを入れるズボンがパンパンだ。アゴもまた二重に近づいてきている。しかし、そんなことはどうでも良い。パッと見た瞬間、意外と小柄な人だなぁと夫婦して思ったが、歌を聴くにつれ、不思議に彼の体が大きく見えてくる。あれが芸歴何十年という歴史で培ってきたカリスマ性なのか、オーラの成せる技なのかわからないが、いずれにせよそこら辺にいる50男のオッサンとは訳が違う。体から発っせられるものが全然違う。

コンサートは、New Albumの曲を中心に進み、大半の、おそらくかつての大ヒット曲をお目当てに来たオバサン達は、なかばキョトンとしている。そのオバサンと同伴してきたダンナさん達などは、自分の居場所がつかめていないかのようだった。

どんなコンサートを見るときでもこれは常識だと思うのだが、やはりそのバンドや歌手の新作を十分に聞き込んでから行くべきだ。ましてジュリーのように、毎年新作を出して決して後を振り返ろうとしない歌手の場合は特にである。それを、言葉は悪いが「イナカの」オバサン連中は・・・まるで往年の大歌手のリサイタルにでも来たかのようなのだ。完全に今のアルバムなど聴いちゃいない。全然ノリが悪いのだ。私が開演前からどこかに持っていたイヤーな予感は当たり始め、新曲が続く間、私はジュリーが気の毒にさえ思うようになってくるのだった。
新曲ラッシュがひとまず終わり、ジュリーお得意のトークショー(?)の始まり。

聞いていて思わず「さすがジュリーだな」と感心することが多かったので、かいつまんでその内容を紹介するが、その大半が自分の最近の活動についてであった。

「最近私はあまりテレビに出ていません・・・(笑)テレビ局から出演の打診はあるんですよ。あるんですが、そのほとんどが昔のヒット曲を歌って欲しいとかそんなのばかりなもんで、こっちとしても新曲も歌わせてもらえるんだったら(出演を)考える・・ようなことをずっと言い続けてきたわけです。そのおかげで、すっかり話が来なくなってしまいました。(観客一同・爆笑) 私は昔から変わってるんです。これからもまだまだ懐メロ歌手として出演する気はありません。昔のヒット曲を現代風にアレンジし直してリバイバルで出しても、たぶん売れることは売れるだろうけど、「たぶん売れる」で終わってしまうのです。

テレビに出れば、何万、何十万という人が一度に私を見てくれますが、それよりだったら私は、こうして全国をまわって毎年出しているアルバムの曲を皆さんに聴いていただきたいと思っております。チケットを買っていただき、こうして開場まで足を運んで下さった皆様を大事にしたいのです・・。いつの日か(コンサートのように走り回ったりできなくなったら)、懐メロ歌手として昔のヒット曲を携えて歌番組に出てもいいかなと思っております。」

 


 

最近のジュリーのコンサートでは、このような内容のトークが多く見受けられる。(ハイビジョンでは最近のライブの模様がマメに放映されている) やはり昔からのファン心理としては、「最近のジュリー、どうしたんだろう」「全然テレビに出ないし、元気なのかな・・」と心配しているところがある。そこを本人は誰よりも熟知している。彼は非常にプロ意識の高い人なのである。

トークの内容は、ウィットとペーソスにも富み、あくまで前向きなジュリーの印象を田舎のオバサン達にも植え付けるのに十分な内容だった。


 

 

コンサートも半ばを過ぎ、オバサン達お待ちかねの「昔のヒット曲」"ダーリング"が始まった。会場の大半のオバサン達もようやく大ノリ。私だって同じ。やはりジュリー全盛当時の曲は今聴いても十分魅力的だ。私達はスタンディング&クラップハンドした。しかし、それでも私達の前に座っているオバサン達は立ち上がってジュリーに手を振ることはなかった。「この人達は何しに来てるんだろう・・・?」ふと私はそんなことを思った。そしてついに恐るべきドッチラケ事件は起こってしまった。それまで一緒に立ち上がって踊っていた妻がいきなりしゃがみ込んだのだ。どうしたのかと思い、妻に確かめると
「後の人から、見えないって言われた・・・・」だと・・・・。私は愕然とした。

ここはコンサート会場ではないか。しかも演歌を聴きに来てるわけではないし、ましてクラシックのコンサートでもない。バリバリのRock歌手のバリバリのRockコンサートのはずである。

確かに私達の他に立ち上がって手を叩いているのは、前列正面の(いかにも追っかけ集団と思われるそれなりの)グループ数十人と、他は会場内ちらほらとわずかな人だけ。98%の人が座って静かにご覧になっていらっしゃる。なんだこりゃ?冷静に見回すと、およそRockコンサート会場とは言えない状況なのだ。40代から50代の方々は、世間体が邪魔をしてノリ切れないのか。それとも長時間立っていることもできないお疲れモードなのか。Stonesの時など、60代の人でさえ、ずっと何時間も立ちっぱなしで声援を送るのに・・・・。

我々にご丁寧に注意して下さった白髪のオッサンは、まさに先に書いた「自分の居場所をつかめてない」付き添いのオッサンで、手を叩いてノッてるわけでもなければ、歌が終わっても拍手するわけでもない。ただ腕を組んでいるだけ。「なんのために来てるのよ、あんた?」と思わず声に出して言いたくなった。我々が立っているせいで見えないのであれば、自分も立ち上がって見ればいいじゃないか、その方がコンサートに来た雰囲気を味わえるというもんだ。しかも注意してくれるのであれば、その歌が終わってからでもいいではないか!!!

しかも!! 開演前にもらった注意書き(co-coloコーポレーション)にも、「自分の席での、スタンディングによる鑑賞は、他のお客様のご迷惑にならない限りは、ご自由ですので、最後迄、思う存分にお楽しみ下さい」とある。

「他のお客様の迷惑」これに私達のスタンディングが抵触したとは、到底思えない。何しろ私達の席は端だったので、私達が立ち上がったせいで見られないという人は (ステージと私達の席の角度からしても)誰もいなかったのである。これが立ち上がっているのが私達だけで、それもその後に何列も席があったなら、私達だって納得して、おとなしく座ろうものだが、そんな状況ではないのだから、どう考えても納得できない一言であった。やっぱりあのオッサンには「オメエさんみたいな人は、おとなしく家で酒でも飲んでろ」と言いたい。

これって、逆恨みでしょうか?

そんなことがあって、私達は急速にシラケてしまった。「このドッチラケ感、どうしてくれる、このオヤジ!」と心の底で大声で怒鳴りながら、ジュリーを見続ける私達夫婦2人。

そしていよいよコンサートの終盤、往年の大ヒット曲「TOKIO (トキオ)」などが始まり、ようやく・・・本当にようやく、会場のボルテージが上がりはじめてきた。「勝手にしやがれ」を歌いだした頃には、とうとう観客総立ちだ。私はこの曲で誰も立ち上がらなかったら、このコンサートは失敗だと、まるでジュリーの立場で状況を見ていた。「許されない愛」「危険な二人」など、会場の客層に合わせて選曲したかのような曲目が続く。それらの"懐メロ"をアンコールとして、ジュリーコンサートin 湯沢は終了した。


 しかし、まだ腹ワタの煮えかえりが収まらない私は、先ほどのオッサンに「注意するにもタイミングというものがあるだろう」と、何が何でもヒトコト言いたくて、キゼン&ブゼンとして後ろを振り返った。そうしたらなんとアンコールがすべて終わる前に、そいつらの姿はなかったのである。だから、何しに来たんだよー、あんたら。

 

 このコンサートを個人として総括的に見れば、やはり秋田県にジュリーが来たのは間違いであったといえる。秋田のオバサン連中はやはりまだまだ知的レベルが低い。情報も遅れすぎている。新曲を出していることすら知らないのは論外で、どのようにロックコンサートを見たらいいのか、そのような根本からしてもっと勉強するべきだ。(黙って座って見るのもまた一つの見方だというような言い訳は通じない。ロックコンサートは演奏側と聴衆側との意識的高揚の融合が必須だから。さもなくば演奏側が曲芸の猿回し状態になる。今回は最後の盛り上がりを除いては全くその状態であった) またそのためには、オバサン達本人の努力もさることながら、地方公共団体単位でもっと文化的レベルの向上に努めるべきかもしれない。そうでもしないと、これから先、秋田県には名だたるエンターテイナーや、学術・文化人は来なくなる。これからはどんどんそういった人を官民一体で招いてもらい、私も含め、どのようにその場その場は接するべきなのか(TPOに応じて)、学ぶ必要があると思う。そのような機会に恵まれないでいると、宮城県の成人式のように、ゲストが怒って帰ってしまうような事態が起らないとも言えない。ジュリー3

 まぁ、面倒くさい話は抜きにして考えると、長年のファンであるジュリーを、そのシワさえ確認できるくらい近いところで見ることができたし、実物の振り付けも見ることもできた上、「やっぱり本物は歌がうまいなぁ。負けた・・。」と今後の自分のカラオケ人生にハリをもたらしてくれたので、大いに満足するべきなのかもしれないなぁ。芸歴30年以上の50男が発散する魅力に、その芸歴くらいしか生きていない私は圧倒されたのでした。                           おしまい 10/20

復活!ジュリーへ
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